≪ アズマ? メール・マガジン 12号 ≫
縫製研究室にストレッチ素材を本縫ミシンで縫う上で、
多くのお問合せをいただいております。
ほとんどが、同じ傾向のお問合せでした。
=お問い合わせ内容=
20%を超える(中には150%を超える)ストレッチ性の
素材を本縫ミシンで縫いたいが、縫糸・ミシン針・ミシンの
選択・設定について、教えてほしい。
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§1.2つの問題点
1.力が掛かり解放された後に、正常な縫い目を確保できるか?
2.力が掛かったときに、縫糸が切れないで保てるか?
§2.縫糸の限界伸度(切れるまでの伸び)
ストレッチ素材には限界伸度の高い糸を選択しようと考えるのは当然のことと思います。
以下に、代表的な糸とストレッチ素材の対応時に
話題になる縫糸を上げてみました。
〇 #60及び#50の限界伸度
(糸を伸ばし切断された時の伸びの割合)
ポリエステル系
? スパン糸 17%〜20% (ポリエステル)
? フィラメント糸 20%〜26% (ポリエステル)
? 複合糸
ハイパー 29% (ポリエステル)
ファインμ 18%〜20% (ポリエステル)
キングフィット 18% (ポリエステル)
マナード 16.5%〜17.2%(ポリエステル)
(各メーカー公開データ)
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ナイロン系
? ユニロン 23%〜27% (ナイロン66)
? レジロン糸 30% (ナイロン66)
? リンリン(グンゼ)30%〜40%(ナイロン66)
(各メーカー公開データ)
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ポリエステル系弾性糸
? RSS50糸 48% (ポリエステル)
(フジックス)
? エッフェル糸 64.9% (ポリエステル)
(カナガワ)
(各メーカー公開データ)
?−?は、素材に関係なく最も多く使用されている糸。
+++===
?−?は、伸びに対応する時に、使用されることの多い糸です。
+++===
?−?は、最近、ストレッチ対応糸として、注目されている
高伸度な縫糸です。
§3.本縫ミシンで使用する縫糸
一般的に考えればストレッチ素材に追随しやすい、
超高伸度の縫糸(?−?)を使用するのが合理的であると考えますが、
特性を理解して使用することが重要です。
? 超高伸度なので、糸が伸ばされた状態で縫製されると、
縫製後、糸が縮むことにより縫目に波うちが形成される場合が
あります。
? 縫製後にテンションをかけた場合に生地とミシン糸の
復元力の差によって縫目が乱れる場合があります。
§4.対応策
1. 下糸は伸びて巻かれないように弱い張力で巻き、
上糸も同様にテンションを弱くして縫製する。
2. 生地も同様に伸びた状態で縫製されると、
生地が元に戻った際の縫目にパッカリングが発生します。
生地の伸びを抑えるためにも、送り歯が針板から平行に
上がるようにし、押え金による圧力を抑えるために
調整バネを弱いものにする。
また、生地に対し滑りの良い押え金を使用することを
お薦めします。
3. ウーリー糸の使用。但し、伸度は大きいのですが
上糸としては使用できないため下糸として使用してください。
下糸をボビンに巻くときは片寄ると絡みやすくなるので
注意が必要です。テンション1〜3gf程度が良いと思います。
§5.ミシン針の選択(本縫ミシン 基準)
ストレッチ素材の場合、必要な事は次の様になると考えます。
1. 織糸に縫い糸が刺さると糸が動けず、地糸切れ、縫糸切れが
起こりやすくなります。出来るだけ織糸に縫い糸を
貫通させないことです。
2. 縫製時に素材がズレ、伸びてしまうことにより、
針が折れてしまう場合があります。
ということから推測しますと
? 針先はボール・ポイントが良い。
? 中厚地の場合、強い針が良い。
以上から
中厚地で動きやすい生地の場合、縫製時に針に負担がかかり、
曲がりやすくなるため、
「DBx1−NY2(Sポイント)」をお薦めします。
従来の2段タイプと異なり針幹はロングテーパー形状を採用し、
高速縫製時の針振れを減少させます(下図参照)。
薄地では 「DBx1−KN」が推奨出来ます。
中厚地同等に曲がりを抑えるために、
薄地の場合でも標準以上に細い針は推奨出来きません。
【オルガン糸針関係表】を参考にしますと
(例)#60 ナイロン・フィラメント糸では
#9〜#11が、指定範囲。
(ポリエステルも同様の指定でした)
よって、
中厚地なら 『 DBx1−NY2 #10〜11「S」 』
薄地なら 『 DBx1−KN #10〜11 』
という選択を推薦させて頂きました。
以上、お問い合わせ頂いたお客様とのやり取りを
ご参考までレポートさせて頂きました。
≪編集後記≫*********************
前任の鵜木から引き継いで弊社縫製研究室メールマガジンを編集いたしました森田と申します。
研究のレベルもその活用の有用性も、お客さまとのコミュニケーションによって向上すると考えております。
今後とも変わらずご愛顧くださいますようよろしくお願い申し上げます。
残暑厳しき折り、くれぐれもご自愛下さい。
平成24年8月24日 アズマ株式会社 企画開発課 森田達也
縫製研究室 浅川幸夫